「ちいさな本榧まな板」は、キッチンにさっと立てかけておき、必要なときにひょいと取り出せる薄型のまな板です。碁盤や将棋盤の最高級材として知られる「本榧(ほんがや)」を使った、少し珍しい一枚。大きなまな板をわざわざ出すほどではない「ちょっとだけ切りたい」場面で活躍します。
特徴
このまな板には、大(約21×15cm)と小(約18×13cm)の2サイズがあり、厚みはどちらも1.5cmです。ここでは在庫の安定した大サイズを中心に紹介します。大サイズでも重さは約220gと軽く、手のひらに近い感覚で持ち上がります。朝の忙しい時間にレモンをひと切れ、薬味をとんとん、パンをさっと——そんな小回りのきく場面にぴたりとはまるサイズ感です。薄いぶん水切れがよく、洗ったあとに立てかけておけば乾きも早い。シンクまわりに置いても場所をとらず、取り出すのが億劫になりません。
厚みのある定番の大判まな板が、毎日の調理をどっしり受け止めるメインの一枚だとすれば、こちらは薄型・小さめのサブの一枚です。榧工房かやの森は、この薄さゆえに削り直しができないと明示しています。厚く育てて削り直しながら長く使う定番まな板とはねらいが違い、軽さと取り回しのよさ、そして榧という木そのものを日々そばに置く楽しさに価値のある一枚です。価格帯も手に取りやすく、木のまな板の入口としても迎えやすい存在です。
榧(かや)という木
榧は、囲碁の碁盤や将棋盤の最高級材として古くから珍重されてきた木です。緻密で美しい木目、清涼感のある香り、そして高い耐久性——榧工房かやの森は、これらを榧の身上に挙げています。「檜千年、槇万年、榧限りなし」と称されるほど朽ちにくく、水にも強い木で、昔は船舶や風呂桶の材にも使われてきました。
そして榧を語るうえで欠かせないのが、その成長のゆっくりさです。30cm伸びるのに3〜4年、碁盤がとれる直径1.1mほどに育つには300年以上かかります。いまの日本では伐採できる榧がほとんど残らず、「幻の木」とも呼ばれる希少材になりました。碁盤の名器を生む木を、日々のまな板として暮らしに迎えられるのは、榧を専門に扱うこの工房ならではです。
作り手と森づくり
このまな板を手がけるのは、高知県の「榧工房 かやの森」(株式会社高知前川種苗)です。はじまりは、榧に惚れこんだ会長が「このままでは榧がなくなってしまう、碁盤をつくる榧の木を未来に残したい」と、個人で植林を始めたこと。それから約30年、高知や四国の山々に植えた苗木は30万本以上(2016年時点)にのぼります。獣害や育ちにくさで残ったのは3割にも満たないものの、木は少しずつ大きくなり、実をつけるものも出てきました。掲げる言葉は「300年先、榧の森を夢みて」です。
自分が生きているあいだには完成しない森を、それでも次の世代へ手渡そうとする。一枚のまな板の向こうにその長い時間があると知ると、木を「使わせてもらう」という感覚が自然と湧いてきます。木を暮らしに取り入れながら森の未来を思う——クロスウッドが思い描く姿勢と重なる作り手です。
榧工房かやの森の森づくりについては、森づくりに取り組む作り手の紹介でもう少し詳しく紹介しています。
お手入れ
使う前に、まな板の両面をさっと水で濡らします。表面を湿らせておくと、汚れやにおいが染み込みにくくなります(片面だけだと反りの原因になります)。使ったあとはつけ置きを避け、早めに洗い、側面や底面まで水気を拭き取ってから立てて乾かします。無塗装で薄型のため乾燥で反りや割れが出やすく、定期的に食用オイルを薄く塗っておくと安心です。
食洗機・乾燥機は使えません。直射日光やエアコンの風が直接当たる場所も、割れや反りにつながるため避けます。そして薄型ゆえに削り直しはできません。ひと手間はかかりますが、その手間ごと、木と付き合う時間になっていきます。
まとめ
碁盤の最高級材として知られ、300年をかけて育つ希少な木・榧。それを、薄くて軽い「ちょっと切り」のまな板というかたちで、気負わず暮らしに迎えられるのがこの一枚です。すでにメインのまな板がある人の「もう一枚」としても、木の道具の入口としてもちょうどいい。珍しい木と、その背後にある森づくりの物語ごと、台所に迎えてみてください。
