榧(かや)は、碁盤や将棋盤の最高級材として知られる木です。けれど成長がとてもゆっくりで、立派な成木になるまでに約300年かかるといわれ、いまの日本では絶滅に近い「幻の木」になっています。明治以降に伐採が進む一方で植林はほとんどされず、木材市場に出ることも年に数えるほどになりました。
榧工房かやの森の会長・前川穎司さんは、囲碁を愛し、自ら碁盤をつくるほど榧に魅せられた人です。国内外から榧材を集めて碁盤づくりに没頭するうち、日本の榧が絶滅に近いことを知り、「このままでは榧がなくなってしまう。碁盤をつくる榧の木を、自分で育てたい」と考えるようになりました。本業が種屋だったこともあり、榧の苗を種から育て、山に植える道を選びます。
それから30年あまり。高知と徳島の山々に植えた榧は、30万本以上にのぼります。植えた苗は野ネズミやウサギに、若木はシカやイノシシに食べられ、植えては食べられの繰り返し。それでも毎日のように山に通い、世話を続けてきました。掲げているのは「300年先、榧の森を夢みて」という言葉です。自分が生きているあいだには決して完成しない森を、それでも未来へ手渡そうとしています。
クロスウッドは、この榧の森づくりに深く共感しています。一枚のまな板の向こうに、300年先を見据えた植林の営みがある——木を暮らしに迎えることが、そうした森づくりへの共感の入口になればと願っています。クロスウッドは、森を思う作り手の輪が広がっていくことを、これからも応援していきます。
