漆を「植えるところ」から始める作り手がいます。この栗の木カレースプーンをつくる和うるし工房あいは、香川県善通寺市にある、漆作家の松本和明さんと宮崎佐和子さん夫妻の工房です。自分たちで漆の木を育て、漆を掻き、その国産漆だけで器やカトラリーを仕上げています。栗の木に国産漆100%の拭き漆をかけた、ひとつずつ手づくりの一本。素材の背景にひかれる人にも、毎日しっかり使える大きめのスプーンを探している人にも応える、味わいのある道具です。

特徴

このスプーンの第一印象は、約19cm×4cmという大きめのサイズです。すくう面にゆとりがあるので、カレーはもちろん、スープやシチュー、チャーハンといった、しっかり食べたい場面で活躍します。ティースプーンのような小ぶりな一本とは役割が違い、食卓の中心で使うカトラリーです。ひとつずつ手づくりされるため、寸法や木目、色の出方には少しずつ個体差があり、同じものは二つとありません。

仕上げは国産漆100%の拭き漆です。拭き漆は、漆を薄く塗っては拭き取る作業を何度も重ね、木地に漆を染み込ませていく技法で、木目を活かしたつややかな表情になります。販売元によれば、灯油やテレピンといった溶剤を使わず、国産漆だけで仕上げており、口当たりはなめらかに整えられているとのことです。木のカトラリーには、金属より軽く手になじむ、口当たりがやわらかい、器の内側を傷つけにくいといった良さがあります。

当サイトでこれまで紹介してきたスプーンと並べてみると、この一本の個性がはっきりします。食洗機で洗える量産5本セットの「なごみ」、軽くて香りのよい白木のひのきのティースプーン、食用ウレタン塗装で気軽に使えるくるみのスプーン。それらに対してこの栗のスプーンは、堅い広葉樹の木地に国産漆の拭き漆をかけ、作家がひとつずつ仕上げた一点ものです。大きめで実食向き、価格帯も少し上。気軽な普段づかいというより、素材と作り手の物語ごと迎え入れたくなる性格の道具です。

木の種類について

使われている木は、栗(くり)です。栗は古くから建材や器具に使われてきた広葉樹で、木質が堅く、水に強い部類とされてきました。はっきりした木目と、重みのある落ち着いた色合いが持ち味です。

針葉樹と広葉樹で印象が分かれるのも、木のスプーン選びのおもしろさです。たとえばひのきは軽くて明るい白木で、ほのかに清々しい香りが立ちます。いっぽう栗は堅く緻密で、深く落ち着いた風合い。そこに拭き漆が重なると、木肌はいっそうつややかになり、色合いも深く見えてきます。明るい白木が似合う日もあれば、こうした濃く落ち着いた木が手になじむ日もある。気分や料理に合わせて選べるのも、木のカトラリーならではの楽しみです。

もうひとつ、混同しやすい点を補っておきます。「漆塗り」は表面の仕上げのことで、木そのものの種類ではありません。このスプーンは、栗という木に、拭き漆という仕上げをかけたもの。木地と仕上げを分けて見ると、特徴がつかみやすくなります。

お手入れ

拭き漆をはじめ漆の器は、つややかで水にも比較的強い部類とされますが、扱いにはいくつか心得ておきたい点があります。難しく考える必要はなく、漆器の基本を押さえれば長く付き合えます。

  • 食洗機・電子レンジには入れない。
  • スポンジと食器用洗剤でやさしく手洗いし、スチールたわしやクレンザーは避ける。
  • 水や洗剤に長時間つけ置きしない。煮沸も避ける。
  • 洗ったら早めに水気を拭き取り、しっかり乾かす。
  • 直射日光や急激な乾燥、長期間の放置を避ける。

漆は使ううちに表情が落ち着き、艶が深まっていくといわれます。とくに身構える必要はなく、やさしく洗って、ためずに乾かす。この基本を守りながら毎日使うことが、いちばんの手入れになります。

まとめ

漆の木を植え、育て、掻いて、器に変える。和うるし工房あいの栗の木カレースプーンは、そんな希少な国産漆の手仕事を、毎日の食卓に迎えられる一本です。約19cmの大きめサイズはカレーやスープにしっかり使え、堅く水に強いとされる栗材と、つややかな拭き漆の風合いが魅力。作家がひとつずつ仕上げる一点もので、贈り物にも向きます。素材の根もとから生まれる道具に心が動いたら、ぜひ候補に入れてみてください。サイズや在庫、実物の写真、最新の情報は、下の購入リンク先(取扱いショップ)で確認できます。