湯桶や寿司桶に使われる椹(さわら)は、どこで育ち、これからどこで育っていくのか。長野県木曽郡南木曽町の志水木材産業は、その木を使うだけでなく、地元の山に椹の苗を植えています。
志水木材産業は、1944年に製材業から始まった会社です。電動のこぎりが無かった時代には、水車の力で丸太を挽き、建築の資材などをつくっていました。その後、木の浴槽をつくるようになり、いまは湯桶や風呂椅子、寿司桶、おひつ、桶や樽まで手がけています。丸太の製材から製品づくり、販売までを、いまも自社で一貫して行っています。
桶の材として使われる木曽の椹は、多くが国有林から伐り出されます。ただ、資源が枯れてしまわないように、伐採される量は年々減ってきました。使う木が少なくなっていくなかで、志水木材産業は、国が進める森の手入れに力を貸そうと、ボランティアで山の作業に加わることにしました。
最初の仕事は、地ごしらえです。地ごしらえは、苗を植える前に植える場所を整える作業のこと。檜の植林木が立ち並ぶなかに椹の苗を植えるため、社員全員で山に入り、植える場所の木を間伐して、生い茂った笹を刈りました。そして檜を間伐した斜面を30cmほど掘り下げ、ひとつずつ椹の苗を植えていきました。
地ごしらえから植林、その後の手入れまで、椹の山ができるには何十年もかかります。それでも志水木材産業は、桶づくりという伝統産業を継いでいくために、後の世代に椹の山を残したいと考えています。地元の長野県木曽で続けるこの活動を、自然を守るための自分たちの務めとしています。椹でつくったさわら湯桶や、同じ作り手の高野槙 風呂椅子(大)を手に取るとき、木曽の斜面に並ぶ小さな苗のことを、少し思い浮かべてみてください。