木を植えることと、植えた木の面倒を見つづけること。森林保全団体の more trees は、その両方を森づくりと考え、地域の人たちとともに森へ手を入れています。
more trees は、2007年に生まれた一般社団法人です。創立者は音楽家の坂本龍一。発起人は坂本龍一・細野晴臣・高橋幸宏・中沢新一・桑原茂一の5人で、100名を超える賛同人が加わって活動が始まりました。出発点にあったのは、森林破壊と地球温暖化がこのまま進んでいくことへの強い危機感でした。いまは建築家の隈研吾が代表を務めています。
活動の場は、国内外の24か所に広がっています。それぞれの地域と協働しながら、植林と育林を続けてきました。苗木を植えたら、まわりの下草を刈り、混み合ってきた木を間伐し、枯れてしまった苗木は植え直す。植えて終わりにせず、手入れの積み重ねまでを森づくりの仕事に含めています。国内では、木材の生産に向かない場所などで、スギとヒノキに偏りがちな人工林を、いろいろな樹種がまじりあう森や広葉樹の森へ、少しずつ切り替えていく取り組みも進めています。
森で育った木を、暮らしの側へ届けることにも力を注いでいます。国産の木で独自の木製品を企画して販売するほか、企業のノベルティや空間づくりもプロデュースしています。more trees が関わる森が取り込んだCO2を使い、企業などが出したCO2を差し引く、森林由来のカーボン・オフセットも手がけています。掲げる言葉は「都市と森をつなぐ」。目指す先には「森と人がずっとともに生きる社会」があります。
岐阜県の東白川村と中津川市加子母は、その活動地のひとつです。東濃と呼ばれるこの一帯は、室町時代からヒノキの産地でした。寒暖差の大きな土地で長い年月をかけて育つ東濃ヒノキは、木目が細かく丈夫な材として名が通っています。more trees は2012年3月から、東白川村、東白川村森林組合、加子母森林組合、株式会社山共と協定を結び、この地域の森に関わってきました。
協定を結ぶ地元の側も、森の管理に長く向き合ってきました。東白川村は2003年に、森林管理協議会(FSC)が森林と木材の流通・加工を評価して認証する、FSC認証を取得しています。加子母森林組合は、樹齢の違う大小の木がいっしょに育つ「複層林」を育て続け、2009年には、林業団体や環境NGOなどが立ち上げた「緑の循環認証会議」による森林認証、SGEC認証を取得しました。
この地域の東濃ヒノキは、more trees が設立10周年を記念してつくったスツール(シングル)にも使われています。デザインはジャスパー・モリソンと熊野亘。職人が手仕事で用意した部材を、届いた先で使い手が組み立てて仕上げる、無塗装の一脚です。クロスウッドは、木を植え、手入れを続け、その木を暮らしへ手渡そうとする more trees の歩みに共感しています。腰かけるたびに、ヒノキが育った東濃の山へ思いを向けるきっかけになればと思っています。